COLUMN コラム

防げる可能性のある交通事故をひとつでも減らすには - 乗合バスの横転・炎上事故を受けて -

8月22日、名古屋高速道路で、空港に向かっていた乗合バスが分離帯に衝突して横転・炎上するという事故が発生しました。
この痛ましい事故では、乗客と運転手の男性2人が死亡、計7人が怪我をしています。車体や現場の路面には異常がなかったと報告される一方で、運転手にも持病はなく、ここ2年の健康診断結果も全て正常だったことがバス運行会社から報告されています。また、事故原因の調査の有効な手段となるはずのドライブレコーダーとSDカードは焼失した可能性が高く、原因究明に向けた捜査は長期化が予想されています。

今回の事故では、残念ながら死亡者が発生してしまいました。2011年より10年間の交通事故数の推移をみると、自動車による交通事故全体も事業用自動車による交通事故も緩やかに減少を続けています。しかし交通事故の発生件数に対して、交通事故による死亡事故数の減少幅が小さいのが現状です。(2020年はコロナ感染症の拡大のため前年度からの減少幅が大きくなっていると考えられています。)

交通事故の発生件数減少の要因の一つとして、自動車の安全性能の向上が挙げられます。急ブレーキや急制動時の車両の挙動制御を容易にする新技術の投入、さらに先進安全技術として、警報機能や衝突被害軽減ブレーキ等の搭載が進みました。また事業用自動車では、さまざまな問題が発生するたびに、関係省庁や団体が、事故を未然に防ぐための対策や規制の強化を段階的に行ってきたことも重大事故発生を食い止めるために役立ってきました。
車両管理はもちろんのこと、運転手の運転時間と拘束時間、勤務と次の勤務までの休息時間など、さまざまな項目を挙げて厳格な基準を定め、過労運転の防止に努めてきました。

さらなる交通事故数削減のために

この度の事故が防止できたかどうかは分かりませんが、通信型(クラウドタイプ)のドライブレコーダーが装着されていれば、乗務前の点呼では確認できなかったドライバーの異変を、運行管理者が察知して交通事故を防ぐことができたかもしれません。さらに、車線逸脱や車間距離等を正確に把握し警報情報を通知するモービルアイなどを活用した運転支援システムがあれば、予兆を早めに把握して対処できた可能性もあります。

今後も、旅客運送事業者のみならず自動車運送事業者全般に対して、運転者の健康管理や対策の充実、安全運転指導や交通安全教育の徹底、安全機器の導入など、安全運行のための施策強化が求められていくと考えられます。そのためもあって、関係省庁は交通事故削減のための各種補助金や制度を設け交通事故対策の支援事業を行っています。国土交通省では、令和4年度「事故防止対策支援推進事業」を実施しており、J21は2つのカテゴリで認定を受けています。

先進的な機器の導入により、運転者の過労運転を防止し、自動車運送事業者における重大事故を防ぐことを目的とした「過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援」においては、モービルアイ製品と連携機器が補助対象として認定されています。さらに、J21のコンサルメニューは、専門的な知見を有する外部の専門家によるコンサルティングを受けることにより、効果的な安全対策を実施し事故を減少させることを目的とした「社内安全教育の実施に対する支援」の認定も受けています。

今回ご紹介した統計にあらわれる「交通事故」は、いわゆる人身事故であり物損事故は計上されていません。自損事故でも対物補償や修理費用と機会喪失、また交通事故に至らないまでも急ブレーキを掛けてしまえば、旅客運送であればクレーム対象に、貨物運送では荷崩等による損害賠償が必要となる可能性もあります。交通事故削減のための施策が求め続けられる時代に、J21はこれまでの実績と経験を活かし、より具体的で高度な交通安全施策を提供することで、これからもドライバーの運転習慣の改善や交通事故削減に寄与していきます。

<参考>
国土交通省「事故防止対策支援推進事業」ホームページ
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/subcontents/jikoboushi.html

国土交通省・「過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援」ホームページ
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/subcontents/jikoboushi2.html

・申請受付期間:令和4年7月22日から令和4年11月30日まで
・申請対象機器:令和4年4月1日から令和4年11月30日までの間に導入した機器

国土交通省・「社内安全教育の実施に対する支援事業」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/subcontents/jikoboushi3.html

・申請受付期間:令和4年7月22日から令和4年11月30日まで
・申請対象メニュー:契約日が申請日以降であり、かつ、令和5年1月20日までに終了するもの

※事業についてのお問い合わせは、最寄りの各地方運輸局、運輸支局等にお願いします。
※申請受付期間中であっても、予算上限に到達するとその時点で申請受付が早期終了する場合がありますのでご注意下さい。